回転寿司のレーンの上を、フタが半開きの段ボール箱がいくつも流れている。箱からカラフルな紙片がはみ出し、カウンター席の脇に散らばっている

世界一賢いAIの、世界一うっかりなミス

最先端のAI企業が、同じ鍵のかけ忘れを2度繰り返した。

512,000行

設計図が、箱に入りっぱなしだった。

59.8MB

流出したファイルの重さ。プログラムの設計図がまるごと詰まっていた

30分
公開から
5,000超
GitHubスター
約1,000万
Xインプレッション
13
しかも、これは2度目だった。

51万行は、どこからこぼれたか

ソフトウェアには「設計図」がある。開発者が書いた元のプログラムだ。

製品として届けるとき、企業はその設計図を圧縮し、読めない形に変換して箱に詰める。中身を見られないようにするためだ。29

1
プログラムを書く

開発者がプログラムの設計図を作成する

2
箱詰め機が圧縮する

Bunバンドラー(箱詰め機)がコードを圧縮。このとき設計図のコピー(source map)が自動生成される

3
部品倉庫に出荷する

圧縮済みファイルをnpm(部品倉庫)に送り出す

4
ユーザーがダウンロード

ユーザーが部品倉庫から製品を取り出して使う

29

ところが、この箱詰め機には落とし穴があった。初期設定のまま使うと、圧縮前の設計図のコピーを箱に一緒に入れてしまうのだ。29

Anthropicはこの設定を変えなかった。結果、誰でもダウンロードできる部品倉庫に、設計図がまるごと公開された。12

総ファイル数
4,756個
コード行数
512,000行超
source mapサイズ
59.8MB
発見からミラー完了
数時間
129
セキュリティ研究者 Chaofan Shou氏
発見者のChaofan Shou氏

セキュリティ研究者のChaofan Shou氏が、部品倉庫を調べていて異常に気づいた。59.8MBもある不審なファイル。開いてみると、製品の全設計図だった。13

59.8MBのファイルを見つけた。中にはClaude Codeの完全なソースコードが入っていた
セキュリティ研究者、Xへの投稿
Chaofan Shou

彼の投稿は瞬く間に広がり、約1,000万人の目に触れた。GitHubにコピーされたコードは、30分で5,000人以上が「お気に入り」に登録した。13

Anthropicが問題のファイルを削除したときには、すでに世界中にコピーが行き渡っていた。15

箱の中には、何が眠っていた?

散らばった設計図を、世界中の開発者が読み始めた。そこに記されていたのは、Anthropicが隠していた「次の一手」だった。

流出コードから判明した内部コードネーム
コードネーム 動物 モデル ステータス
Capybara カピバラ Claude 4.6バリアント 本番稼働中
Fennec フェネック Opus 4.6 本番稼働中
Numbat ナンバット 未公表 テスト中
Tengu テング Claude Codeプロジェクト 内部用
27

AIモデルには社外に出さない「あだ名」がつけられていた。カピバラ、フェネック、ナンバット。Anthropicの命名ルールは「動物の名前」だった。27

しかし開発者たちが本当に驚いたのは、あだ名の先にあった。

44個

裏メニューのスイッチ。未出荷の新機能が、設計図の中にひっそり眠っていた27

スイッチをオンにすれば動き出す、秘密の機能たち。なかでも話題を集めたのが「BUDDY」だ。27

ターミナルに住みつくAIペット。文字で描かれたアヒルやドラゴンが画面の隅に現れる。種類は18種。最も珍しい「レジェンダリー」の出現率はわずか1%。27

BUDDY — ターミナルのたまごっち
- 起動方法: /buddyコマンド - 種類: 18種(アヒル・ドラゴン・ウーパールーパー・カピバラ・キノコ・おばけ等) - レアリティ: common〜legendary(1%) - カスタマイズ: 帽子・shinyバリアント - ステータス: DEBUGGING / PATIENCE / CHAOS / WISDOM / SNARK - 予定: 2026年5月ローンチ予定だった27

ターミナルにたまごっち。開発者コミュニティは「Easter egg hunting(宝探し)」と盛り上がった。7

流出した未発表機能
機能名 概要 目的
BUDDY ターミナルに住むAIペット 開発者との情緒的つながり
KAIROS 常時稼働モード AIの常駐化・先回り行動
ULTRAPLAN 複雑な計画をクラウドで処理 ローカルの限界を超える大規模計画
Computer Use "Chicago" デスクトップ操作 画面のクリック・入力をAIが代行
27

AIペットから常時稼働まで。Anthropicが描いていた未来の全貌が、段ボール箱から転がり出た。

ただ、宝探しの興奮は長くは続かなかった。箱の底には、もっと厄介なものが眠っていた。

うっかりミスだけの話か?

ここまでは「うっかり漏れた」話だった。だが箱の底から出てきたものは、性質が違った。

流出したコードの中に、「Undercover Mode(変装モード)」と名付けられた機能があった。2718

Undercover Mode

AIの痕跡を消す「変装モード」。その指示文が、流出コードの中から見つかった27

これはAnthropicの社員が、外部のプログラム共有サイトでClaude Codeを使うときに起動するモードだ。中身は明快。「AIが書いたと分かるような痕跡を一切残すな」という指示。2718

具体的には、プログラムの変更履歴に内部のモデル名を書くな、未発表バージョンの情報を出すな、そして——AIであることに触れるな2718

Undercover Modeの禁止事項
禁止対象 詳細
内部コードネーム Capybara・Tenguなど動物名の記載禁止
未発表情報 未リリースモデルのバージョン番号禁止
内部名称 社内リポジトリ・プロジェクト・ツール名禁止
AI利用の言及 AIであることへの言及禁止
2718
1度目はアクシデント。2度目はプロセスの欠陥だ。
Hacker News 投稿者

違う。 Anthropicは、自社のAIが書いたコードを「人間が書いたように見せる」仕組みを、意図的に作っていた。

AI生成コードの透明性が業界の課題になっている中で、AIツールの開発元自身がその痕跡を消していた。コミュニティの反応は厳しかった。18

コミュニティの反応
プラットフォーム 規模 トーン
X(旧Twitter) 約1,000万インプレッション 「2度目の同じミス」への皮肉
Hacker News 200件以上のコメント Undercover Modeへの倫理的批判
Reddit ホットリストのトップ BUDDY機能への興味と宝探し
GitHub 30分で5,000スター超 ソースコード分析・コピー
1318

技術の流出よりも深刻なのは、「信頼の流出」かもしれない。7

なぜ同じ穴に2度落ちたのか

変装モードの衝撃が冷めないうちに、もう一つの事実が浮かび上がった。Anthropicがこの種のミスを犯すのは、これが初めてではなかったのだ。

2025年2月24日
第1回流出 — 初回リリースのファイル内にsource mapが混入。箱に入れないものリスト(.npmignore)の設定漏れ
2025年2月25日
発見・公開 — 発見者Daniel Nakovが抽出・公開。Anthropicは該当バージョンを削除
2025年2月〜2026年2月
13か月の空白 — 根本原因は未修正のまま放置
2026年3月31日
第2回流出 — 59.8MBのsource mapファイルが混入。箱詰め機(Bunバンドラー)の設定未変更
156
3月7日
開発キット混入
本体が丸ごと混入
3月26日
内部文書流出
約3,000件が流出
3月31日
ソースコード流出
51万行が流出
156

1回目が起きたのは2025年2月。まったく同じ原因——設計図のコピーが製品の箱に紛れ込んだ——で、ソースコードが流出した。15

Anthropicはそのとき何をしたか。問題のバージョンを削除しただけだった。5

第1回(2025年2月)

原因: 設計図コピーの混入 対応: 該当バージョンを削除 根本修正: 未実施 出荷前の自動チェック: なし 公式声明: なし15

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第2回(2026年3月)

原因: 設計図コピーの混入(同一) 対応: 該当バージョンを削除 根本修正: 未実施 出荷前の自動チェック: なし 公式声明: なし(4月1日時点)15

箱詰め機の設定を恒久的に変える。出荷前に中身を自動でチェックする仕組みを入れる。どちらもやらなかった。29

なぜ同じ穴に2度落ちたのか。対症療法だけで済ませたからだ。症状を消しただけで、病気を治さなかった。13か月という時間は、根本を直すのに十分すぎるほど長い。5

13か月

同じミスを直すのに与えられた時間。使われなかった。

年間売上規模25億ドルの製品を持つ企業にとって、3月は「流出の月」になった。16

自分が使うAIツールは大丈夫か?

ここまではAnthropicの話だった。だが、この問題はAnthropicだけのものではない。AIが書いたコードには、人間が書いたコードにはない弱点がある。

約2,900万件

2025年にGitHub上で漏洩したパスワード・接続キーの総数。前年比34%増11

AI共著コードのシークレット含有率
AIが一緒に書いたコードは、人間だけのコードの約2倍漏らしやすい
AI共著コード 3.2
人間のみ 1.5
11

AIが一緒に書いたコードは、人間だけで書いたコードの約2倍、パスワードや接続キーを漏らしやすい。11

なぜか。AIはコードを生成するとき、設定ファイルの中身をそのまま埋め込む傾向がある。人間なら「これは外に出してはいけない」と立ち止まる場面で、AIは立ち止まらない。11

回転寿司のカウンターの上のノートパソコンから、鍵やパスワードカードが寿司ネタのように飛び出している
AIが生成するコードにはシークレット(パスワードや接続キー)が埋め込まれやすい Generated: OpenAI gpt-image-1
主要AIコーディングツールのセキュリティ比較
項目 Claude Code GitHub Copilot Cursor
重大な脆弱性 CVE-2025-59536(深刻度8.7) RoguePilot(深刻度9.6) IDEsaster(24件超)
ソースコード流出歴 2回(2025年・2026年) なし なし
セキュリティ設計 サンドボックス+許可制 GitHubとの統合 第三者セキュリティ認証準拠
58101415

答えは「どれも完全には安全ではない」だ。主要な全ツールに深刻な脆弱性が報告されている。ただし、ソースコードの流出を同一原因で2度繰り返したのはClaude Codeだけだ。5810

AIツールは開発の速度を劇的に上げた。だがその速さは、安全を犠牲にして得るものであってはならない。11

この事件が教えているのは、単純な事実だ。

技術がどれほど先を行っていても、それだけではセキュリティの成熟を保証しない。

設計図のコピーを箱から抜く。出荷前に中身を確認する。やるべきことは、どちらも基本中の基本だった。29

回転寿司のレーンの終点で、段ボール箱に真新しい南京錠がかけられている。レーンの向こうには空のカウンター席が並んでいる
鍵は、誰がかけるのか Generated: OpenAI gpt-image-1

Anthropicは世界で最も賢いAIを作る企業だ。その企業が、最も初歩的な鍵のかけ忘れを、2度繰り返した。15

問いは「2度目がないように」ではない。もう2度起きた。3度目を防ぐのは、誰なのか。

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References

  1. VentureBeat. "Claude Code's source code appears to have leaked: here's what we know." https://venturebeat.com/technology/claude-codes-source-code-appears-to-have-leaked-heres-what-we-know, 2026-03-31.
  2. DEV Community. "Claude Code's Entire Source Code Was Just Leaked via npm Source Maps." https://dev.to/gabrielanhaia/claude-codes-entire-source-code-was-just-leaked-via-npm-source-maps-heres-whats-inside-cjo, 2026-03-31.
  3. Cybersecurity News. "Claude Code Source Code Reportedly Leaked." https://cybersecuritynews.com/claude-code-source-code-leaked/, 2026-03-31.
  4. MLQ.ai. "Anthropic's Claude Code Exposes Source Code Through Packaging Error for Second Time." https://mlq.ai/news/anthropics-claude-code-exposes-source-code-through-packaging-error-for-second-time/, 2026-03-31.
  5. Fortune. "Anthropic left details of an unreleased model in a public database." https://fortune.com/2026/03/26/anthropic-leaked-unreleased-model-exclusive-event-security-issues-cybersecurity-unsecured-data-store/, 2026-03-26.
  6. The AI Corner. "BREAKING: Anthropic just leaked Claude Code's entire source code." https://www.the-ai-corner.com/p/claude-code-source-code-leaked-2026, 2026-03-31.
  7. Check Point Research. "RCE and API Token Exfiltration Through Claude Code Project Files (CVE-2025-59536)." https://research.checkpoint.com/2026/rce-and-api-token-exfiltration-through-claude-code-project-files-cve-2025-59536/, 2026.
  8. Penligent. "Claude Code Source Map Leak: What Was Exposed and What It Means." https://www.penligent.ai/hackinglabs/claude-code-source-map-leak-what-was-exposed-and-what-it-means/, 2026-03-31.
  9. Pillar Security. "New vulnerability in GitHub Copilot and Cursor: How hackers can weaponize code agents." https://www.pillar.security/blog/new-vulnerability-in-github-copilot-and-cursor-how-hackers-can-weaponize-code-agents, 2025.
  10. Security Boulevard. "The State of Secrets Sprawl 2026." https://securityboulevard.com/2026/03/the-state-of-secrets-sprawl-2026-ai-service-leaks-surge-81-and-29m-secrets-hit-public-github/, 2026-03.
  11. Anthropic. "Claude Code Security Documentation." https://code.claude.com/docs/en/security, 2026.
  12. Anthropic. "Claude Code Sandboxing Architecture." https://www.anthropic.com/engineering/claude-code-sandboxing, 2026.
  13. Hacker News. "Claude Code's source code has been leaked via a map file." https://news.ycombinator.com/item?id=47584540, 2026-03-31.